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土曜日のディアンドル

新潟県在住20代男性のブログ。

高校時代 平岡拓也の話2

体を温めるためのランニングが終わると、ギャラリーに戻って準備体操をした。

準備体操の次は、ラケットを持っての実践練習だ。

ピンポン球がラケットや卓球台にぶつかる音がギャラリーに響く。

直樹とラリーを繰り返す。機械のように正確に球を打つ動作を繰り返した。

直樹がミスをして後ろに逸れた球を拾いに行く間に僕は体育館に目を向けた。

彼女の姿を見つける。彼女だけが他の人とは違う空気をまとっているように見える。

「拓也」と呼ぶ直樹の声に振り向き、ラリーを再開する。

彼女は僕の視界から消える。

高木美佳と初めて話したのは高校1年生のときだ。

彼女と僕は同じクラスだった。現代文の授業で席が隣同士になり、それからたまに話すようになった。

僕の目から見ると彼女は美しく見えた。だけど、彼女は一般的な意味での美人ではない。

僕は彼女の顔が好きだった。そこには僕のためだけに特別に用意された何かがあるように見えた。

美佳の容姿は猫に似ている。透き通った目が猫のように見える。

美佳には仲の良いクラスメートが2人いた。理沙と絵里子という女の子だ。

3人は休み時間になると集まって何事かを話していた。

初めの頃、美佳と僕は現代文の時間の前後にしか話さなかったのだが、お互いの存在に慣れてくると現代文とは関係のない休み時間にも話をするようになった。

美佳と話をするのは楽しかった。自分と同じくらいの年頃の女の子と話をするのは苦手だったけれど、美佳とは自然に話すことができた。

美佳と毎日のように顔を合わせて、話をしているうちに自然な親しみを覚えた。

僕は女の子と付き合ったことがない。小学校のときも、中学のときも好きな女の子はいたけど、何も行動を起こすことができなかった。

女の子が何を考えているのか正直よく分からない。僕には弟しか兄弟がいない。

自分と同じくらいの年の女の子のことがよく分からない。

でも美佳のことは少しはわかる気がする。ほんの少しだけ。

「美佳って兄弟いる?」と僕が尋ねた。そのとき僕たちは教室にいた。秋の初めだった。
「いるよ。お兄ちゃんがひとり。拓也は?」
「俺は弟がいる。美佳って妹っぽいよね」
「えー、そうかな?拓也は全然お兄ちゃんっぽくないよ」
「マジ?弟と5つも歳離れてるから。そのせいかも」
「私のどこら辺が妹って感じする?」
「分かんないけど、なんとなく妹っぽいんだよね」
「兄弟いるって良いよね」と美佳が言った。
「うん。良い。楽しいよね」